パルプモールドの製品形状のポイント:角Rの付け方で歩留まりとコストが変わる

「こだわりの角R」と「無理のない設計」、その落としどころを見極める
角Rの付け方は、パルプモールドの成形品質を大きく左右する要素の一つです。「角R(かどのアール、丸み)」は、角をシャープに見せたいというデザイン要望と関わりが深く、角Rの大きさは歩留まりや量産コストに直結します。本記事では、実際の案件で得られた知見をもとに、角Rの設計ポイントを解説します。
目次
角Rとは何か、なぜ重要なのか
パルプモールドは、パルプ繊維を型に密着させて成形するため、金属や樹脂のようにシャープな直角を再現することが得意ではありません。角の部分に一定の丸み(角R)を設けることで、パルプ繊維が型の隅々まで行き渡りやすくなり、成形不良を抑えられます。角Rの設定は、見た目の印象だけでなく、量産時の歩留まりやコストに直結する重要な設計要素です。
角Rを極端に小さくするとどうなるか
下の写真は、角Rが0.5〜1mm程度に設定された、ある製品エッジの拡大写真です。このように非常にシャープな角の意匠は、ブランドの世界観を表現するうえで妥協できない要素になることがあります。しかし、パルプモールドでこの角R(0.5〜1mm)を再現しようとすると、型の隅までパルプ繊維が均一に行き渡りにくくなり、不良率は5%程度、条件出し(プレス圧・乾燥条件の調整)がうまくいかない場合は30%近くまで悪化することもあります。条件出しには相応の時間がかかり、歩留まりの低さがそのままコストに跳ね返ってきます。

角Rの付け方とコストの関係
商品の形状や求められる意匠性によって最適な角Rは異なりますが、経験的には角Rが3mm以上あれば、歩留まりを落とさず、コストへの影響も小さく生産できるケースが多くなります。以下は、角Rの大きさと歩留まり・コストの関係の目安です。
| 角R | 不良率の目安 | コストへの影響 | 条件出しの難易度 |
|---|---|---|---|
| 0.5〜1mm | 5〜30% | 大きい(歩留まり低下により単価上昇) | 高い(プレス圧・乾燥条件の調整に時間を要する) |
| 1〜3mm | 案件により変動 | 中程度 | 中程度 |
| 3mm以上 | 低い、安定生産しやすい | 小さい | 低い(比較的容易に量産条件を確立できる) |
※上記は一般的な傾向を示す目安であり、形状・サイズ・素材配合によって変動します。
お客様のご要望を大切にしながら、無理のない設計を
角Rを鋭くすることそのものが悪いわけではありません。ブランドの世界観やデザインアイデンティティとして、その形状にこだわる理由がある場合は、コストや歩留まりへの影響を理解したうえで採用する価値は十分にあります。一方で、明確な理由のないまま慣習的に角Rを小さく設定してしまうと、量産コストを不必要に押し上げてしまうことになりかねません。パクトスでは、お客様のデザイン要望を尊重しながら、歩留まり・コスト・意匠性のバランスが取れる角Rの落としどころを、試作段階から一緒に検討しています。
この記事はパルプモールド開発に関するKnowledge記事です。角R設計の考え方は、機械設計における曲率半径(フィレット)の概念とも共通する部分があります。ご相談はお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。
