弁当トレイに貼るラミネートの選び方 ― パルプモールド容器を「食品対応」にする表面フィルムの基礎知識

ラミネート素材の選び方は、弁当トレイ用パルプモールドを「食品対応」にできるかどうかを左右します。パルプモールド(紙製モールド)の弁当トレイは、そのままでは水分や油分に弱く、汁気の多いおかずを入れると底がふやけてしまいます。
この記事では、弁当トレイ用パルプモールドに施すラミネートについて、素材の選び方・法規制・環境対応・設計上の工夫まで、実務の視点で解説します。
目次
1. なぜ一次容器にはラミネート/コーティングが必要なのか
食品が直接触れる「一次容器」としてパルプモールドを使う場合、表面のラミネート/コーティングは実質的に欠かせません。理由は大きく2つあります。
① 機能面 ―― 水分・油分バリア
パルプ(紙)は繊維の集合体で多孔質のため、そのままでは水や油がしみ込みます。ラミネートは、耐水・耐油バリアとして中身の品質と容器の形状を保ちます。
なお、成形時にパルプスラリー(原料)へ耐油・耐水剤を練り込む方法もありますが、その効果は限定的です。ある程度の撥水・撥油性は付与できるものの、汁気の多いメニューや長時間の保管には十分でないことが多く、しっかりとした一次容器バリアが必要な弁当用途では、表面のラミネート/コーティングと組み合わせる(またはラミネートを主とする)のが確実です。
② 食品衛生法(器具・容器包装のポジティブリスト制度)への対応
ここはよく誤解される点なので、正確に整理します。
- 2020年6月施行の改正食品衛生法により、器具・容器包装に使われる合成樹脂については「ポジティブリスト(PL)制度」が導入され、2025年6月に完全施行されました。使ってよい物質がリスト化され、リストにない物質は原則使用できません。
- 紙・パルプそのものは合成樹脂ではないためPLの直接対象ではありませんが、食品に直接触れる面に合成樹脂のラミネート/コーティングを施す場合、その樹脂層はPLの対象となります。
- したがって正確には「ラミネートが法律で義務」というより、食品接触面は食品衛生法の規格基準を満たす必要があり、そこに使う樹脂は「食品対応(PL適合)グレード」でなければならない、というのが実態です。汁気・油分のある弁当用途では、機能面からも食品グレードのバリアが事実上必要になります。
つまり、「弁当の一次容器 → 食品対応ラミネート/コーティングが実質必須」という認識はおおむね正しく、当社ではPL適合の食品グレードフィルムを使用してこの要件に対応しています。
2. ラミネート素材は「用途 × コスト」で選ぶ
弁当トレイ用のラミネートには複数の素材が選べます。当社で対応している主な素材は次の5種類です。
- PE(ポリエチレン)
- PP(ポリプロピレン)
- PET-G(グリコール変性PET)
- PLA(ポリ乳酸/植物由来・生分解性)
- PBS(ポリブチレンサクシネート/生分解性)
どれを選ぶかは、用途(冷凍するか/電子レンジで温めるか/トップシールをするか/環境訴求をしたいか)とコストのバランスで決まります。
トップシールをする場合は「蓋材」との相性が最重要
トレイにフィルム蓋を熱で圧着するトップシールを行う場合、トレイ側のラミネートと蓋フィルムの素材を合わせる(同系にする)ことが、しっかりシールするための基本です。
一般的でバランスが良いのは、PET-Gフィルム(蓋)× PET-Gラミネート(トレイ)の組み合わせです。冷凍にも強く、透明感・シール性・強度に優れた優秀な素材ですが、価格は高めです。ただし後述のとおり、PET-Gは「電子レンジ加熱」には万能ではない点に注意が必要です。
3. ラミネート素材 比較表
| 素材名 | 特長 | 冷凍 | 電子レンジ | 環境対応 | コスト |
|---|---|---|---|---|---|
| PE(ポリエチレン) | 最も汎用的で加工しやすく安価。柔らかくヒートシール性が良い。耐熱は低め | 〇 | ✖ | △ | ◎ |
| PP(ポリプロピレン) | 耐熱性が比較的高く(約110〜140℃)、温め直しに定番の素材。油分の多い食品では変形に注意 | 〇 | 〇 | △ | ◎ |
| PET-G | 透明感・強度・シール性に優れ、トップシールに好適。冷凍◎。ただし耐熱は約60〜70℃で高温は不得手 | 〇 | △ | △ | △ |
| PLA(ポリ乳酸) | 植物由来かつ生分解性。硬く透明だが脆く、耐熱が低い(約55〜60℃で軟化) | 〇 | ✖ | ◎ | △ |
| PBS(ポリブチレンサクシネート) | 生分解性。柔軟で紙コーティング・ヒートシール適性が高く、PLAより耐熱が高い | 〇 | △ | ◎ | △ |
凡例
・冷凍:〇=対応/✖=非推奨
・電子レンジ:〇=温め直し可/△=グレードや温度により限定的・要確認/✖=非対応
・環境対応:◎=生分解性で分別・堆肥化に有利/〇=中間/△=石油由来(リサイクルは可だが生分解性なし)
・コスト:◎=割安/〇=中/△=割高
※耐熱・電子レンジ適性はフィルムのグレードや厚み、中身(油分・水分)によって変わります。上表は一般的な目安です。
素材選定のポイント(補足)
- 冷凍はPE・PPともにOK。電子レンジはPPが「〇」(温め直しに使える定番素材)で、耐熱の低いPEは「✖」です。
- PET-Gは冷凍とトップシールには優秀ですが、非晶質PET-Gは耐熱が約60〜70℃で、熱い料理の電子レンジ加熱では軟化のおそれがあります。本当に電子レンジ・オーブンまで狙う場合は、同じPETでも結晶化させたCPET(耐熱約220℃)が選択肢になります。
4. 環境素材 ―― PLA と PBS の違い
環境訴求をしたい場合は、生分解性の PLA または PBS を選びます。ひとことで違いを言うと:
- PLA(ポリ乳酸)=植物由来(サトウキビ・とうもろこし等)で生分解性。硬く透明感がある一方で脆く、耐熱が低い(約55〜60℃で軟化)。冷たい用途・常温向き。
- PBS(ポリブチレンサクシネート)=生分解性で、柔軟性が高く、紙へのコーティング・ヒートシール適性に優れ、PLAより耐熱が高い。紙容器のラミネート層として扱いやすい素材。
要するに、「植物由来を前面に出したいならPLA」「ラミネート/ヒートシールのしやすさと耐熱を取るならPBS」という選び分けになります。両者をブレンドして特性を調整するケースもあります。
5.「簡単に剥がせて、分別できる」――当社ラミネートの強み
環境対応で見落とされがちですが、使用後にラミネートフィルムをきれいに剥がして、紙(パルプ)とフィルムを分別できることは、大きなアドバンテージです。

当社のパルプモールドトレイは、フィルムを手で簡単に剥がせる設計・貼り合わせにしています。これにより、
- 紙資源とフィルムを分けて捨てられるため、リサイクル・分別ルールに乗せやすい
- 生分解性フィルム(PLA・PBS)と組み合わせれば、環境負荷をさらに抑えた提案が可能
- 石油系フィルム(PE・PP・PET-G)でも、剥離できることで紙の資源回収を妨げにくい
「貼ってあるから分別できない」という一般的な紙製ラミ容器の弱点を、「剥がせる」という一点で解決できるのが、当社トレイの訴求ポイントです。
6. フィルム厚み・生産数量による選定 ―― ご相談ください
最適なラミネートは、素材だけでなくフィルムの厚みや生産数量によっても変わります。
- 厚み:薄いほどコストは下がりますが、耐水・耐油・シール強度・剥離性のバランスが変わります。中身や流通条件(冷凍/チルド/常温)に合わせた最適厚みの選定が必要です。
- 生産数量:数量によって採用しやすい素材・工法・コストが変わります。小ロットと量産では最適解が異なります。
用途・数量・ご予算をお聞かせいただければ、素材 × 厚み × 工法の最適な組み合わせをご提案します。
7. ラミネートを前提としたトレイ設計の工夫
ラミネート(特にトップシール対応)を前提にする場合、パルプモールドトレイそのものの設計にも工夫が必要です。
- フランジ(シール面/縁)の平滑性と幅:トップシールを確実にするには、蓋を圧着する縁面が平らで、十分な幅を確保できている必要があります。
- コーナー・仕切りのR形状:フィルムが追従しやすい角度・曲率にすることで、シワや浮き、ピンホールを防ぎます。
- リブ・深さ・抜き勾配:フィルムがきれいに密着し、かつ剥離時に一枚できれいに剥がせるバランスを、金型設計の段階から作り込みます。
- 表面の平滑性:ラミネートの密着とバリア性能を安定させるため、成形面の仕上げも重要です。
つまり「良いフィルムを貼る」だけでなく、フィルムが活きる形状をトレイ側で設計することが、品質と分別性を両立させる鍵になります。
お問い合わせ
弁当トレイ用パルプモールドのラミネート素材について、素材選定・厚み・トップシール対応・環境対応(分別しやすい設計)まで、用途に合わせてご提案します。食品衛生法の器具・容器包装のポジティブリスト制度については厚生労働省の解説ページもあわせてご確認ください。試作・お見積りもお気軽にご相談ください。
